2013年2月5日火曜日

生駒ビルヂング

幼い頃、公営団地で育った影響か、レトロな建築物が大好きなのです。
このブログをダシにして、大阪の古き良き時代の建築物を見て回りたいなと思い、検索してみると、このようなイベントが開催中でした。
「船場レトロ建築スタンプラリー」

船場レトロ建築スタンプラリーのスタンプ台紙
船場のレトロ建築をめぐって、豪華商品をもらおう!!ということで、1月26日から3月24日まで開催されています。
私の事務所から目と鼻の先の大阪商工会議所で応募はがきと地図が配布中との情報を得、早速頂いてまいりました。
大阪商工会議所の中でウロウロしていると、職員の方が声をかけて下さり、わざわざ窓口の地域振興部まで案内して下さいました。お忙しい中、とても親切な対応をしていただき本当にありがとうございました。
中央区内には私的に気になるレトロ建築が多くあるのですが、その中で一番にここに書きたいと思っていたビルが・・・ありました。スタンプラリーにエントリーされています。

生駒ビルヂング

堺筋に面し、ビジネス街のど真ん中でひときわ存在感を放っているレトロ建築です。
大阪商工会議所でいただいた船場建築マップは、所在と建物の説明が写真付で掲載されていましたので、生駒ビルヂングの概要をそこから引用させていただきます。
旧称 生駒時計店
1930年築(2002年改修)
設計 宗建築事務所(改修設計Y‘s建築設計室)
構造RC(鉄筋コンクリート)造 地上5階地下1階
昭和5年に建築されたビルなのですね。
現在、生駒ビルヂングにはコンシェルジュオフィス北浜T4Bというレンタルオフィスが入居しています。そちらの受付の方が、ご親切にもつい最近まで開催されていた別のイベントの近代建築散策MAPを下さいました。快く対応下さりありがとうございます。
そのコンシェルジュオフィス北浜T4Bのホームページに生駒ビルヂングの歴史や見どころが詳しく紹介されています。
コンシェルジュオフィス北浜T4Bのホームページ

壁面のスクラッチタイルとテラコッタが特徴と紹介されています。
このスクラッチタイルは間近で見ると、表面の凹凸がかなり激しく、そして釉薬が贅沢に厚くかかっていることがよくわかり、これがビル全体の独特の雰囲気をもたらしているのだなと納得できます。

北側壁面のスクラッチタイル
中ノ島の中央公会堂が竣工したあたりを境に、明治時代を彩った赤煉瓦の建築物は途絶えてしまいます。大正12年(1923年)の関東大震災の時に、多くの煉瓦造の建物が被害を受けたのが影響したのでしょう。
そして、アメリカが生んだ建築の巨匠フランク・ロイド・ライトが旧帝国ホテル設計のために来日し、そこで使われたのがスクラッチ煉瓦だったので、大阪でも続々とスクラッチタイルを取り入れた建物が建設されたようです。
スクラッチタイルの流行は大正14年(1925年)から昭和10年代前半まで続き、その時期はちょうど大阪が人口も面積も日本第一の都市となった「大大阪時代」と一致します。
そして、そのスクラッチタイルの色はたいてい黄から茶系統の色であったそうです。
この頃の大阪は工業化が進み、「大大阪」と呼ばれると同時に「煙の都」とも呼ばれていました。煤煙で建物の外壁が汚れやすく、そういった理由からも茶系統のタイルが主流になり、同時にそれが大阪の繁栄を示す色となったのでしょうね。
生駒ビルヂングは、その時代の大阪の輝きを今も私たちに見せてくれています。
屋上の時計塔とその下に続く出窓、そして二階の丸窓で巨大な振り子時計を表現しているそうです。

昼間はピンときませんでしたが、日が暮れてから眺めてみると・・・。

おわかり頂けましたでしょうか?
見事に大きな振り子時計を表現していますね。



鷹の彫刻と装飾板
 建築様式としては、アール・デコという装飾様式だそうです。このアール・デコという様式は、一時衰退していたアール・ヌーボー等の装飾的スタイルが、原始美術や画家のグスタフ・クリムト等が提唱する分離派の影響を受け工業デザインと結びついて復活し、1925年のパリ国際装飾美術展で集大成されたものだそうです。
アール・デコ様式の代表的建築物はニューヨーク摩天楼のクライスラー・ビルやキングコングが登ったエンパイア・ステート・ビルだとのこと。
生駒ビルヂングの竣工はクライスラー・ビルと同じ1930年なので、当時の世界的流行の最先端を行くビルだったわけですね。
 
出窓と丸窓

アール・ヌーボーはジャポネスク(日本趣味)の影響を受けた様式だといわれていますが、そのアール・ヌーボーが分離派(ゼツェッション)の影響を受け、そしてまたアール・デコ様式として日本の生駒ビルヂングに帰ってきたわけで、巡り合わせの面白さを感じます。

私は建築の専門家ではないので、聞きかじりの雑学をひけらかすのはこれで終わりにいたします。

北側1階ではカフェを営業されています。
レトロモダンな空間で過ごすひとときは、好きな人にはたまらないでしょうね。
貴重な歴史的建築物が、現代もこのように有効に利用され保存され続ける理想の形を、この生駒ビルヂングで見た気がいたします。

  • フランク・ロイド・ライト・・・アメリカの建築家。旧帝国ホテルの設計など、母国アメリカよりも日本に多くの建築を残した。機能主義の建築デザインに対して、人間の健康的な生活に適する有機的建築を唱え、カウフマン邸(落水荘)など優れた住宅を建築。
   カウフマン邸(落水荘)
https://www.youtube.com/watch?v=3mjOKoW390E

  • アール・デコ様式・・・1925年様式ともいう。幾何学形態が多く用いられた。
  • ゼツェッション(分離派)・・・19世紀末から20世紀初頭にウィーンで起こった芸術運動。アカデミズムからの分離を訴え、アール・ヌーボーの影響を受けながら、実用性のある新しい表現を目指した。提唱者はグスタフ・クリムトだが、理論的主柱となったのは、実用主義を唱えたオットー・ワグナー。

  • アール・ヌーボー・・・意味は「新しい芸術」。19世紀末のヨーロッパを象徴する芸術運動。ジャポネスク(日本趣味)の影響を受けたアール・ヌーボーの特徴は、植物がからみつくような曲線の多用にある。
  • グスタフ・クリムト・・・オーストリア帝国の画家。ウィーン分離派を結成し初代会長に就任。
   グスタフ・クリムトの作品


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